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フランス滞在(2)―「美しき街」にて 公式HP映画「哲学への権利――国際哲学コレージュの軌跡」

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フランス滞在(2)―「美しき街」にて

「ベルヴィルBelleville(美しき街)」というフランス語の響きと意味とは少し異なり、この地区は移民が大半を占める騒々しい庶民的な区域だ。パリ20区の北東、メニルモンタンの丘のふもとにあるこの街にアパートを借りて滞在している。

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(地下鉄駅前の中華料理屋。中国語では「美麗都」。)

20世紀初頭からベルヴィルは難を逃れた移民がやってくるアジール空間である。虐殺を逃れたロシアおよびポーランド系ユダヤ人、アルメニア人、トルコの支配から逃れたギリシア人、ナチスの迫害を逃れたドイツ系ユダヤ人、フランコ独裁政権から逃れたスペイン人……中国・ヴェトナム系の移民も含めて、ベルヴィルは雑多な雰囲気が漂う街区だ。

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(フランスではローラー・スケートは一般的。ローラー・スケート愛好協会が企画する、集団街頭走行が度々実施される。警察官もスケート靴を履いて併走し、数百人が車道を走り抜けていった。)

パリではいつも魅力的な展示がいくつもおこなわれている。3月末現在で興味深いのは、まず、パリ市役所で開催されている「パリコミューン」展(5月28日まで)。1871年に民衆が蜂起して革命政府が誕生してから140年。200以上の版画、写真、ビラが展示され、革命政府の樹立から崩壊までが紹介されている。頓挫した革命を公的な施設で記念して展示するのは興味深い。

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フランス国立図書館(ベルシー)では、「ガリマール、1911-2011年――出版社の一世紀」が展示されている(7月3日まで)。ガリマール出版社はフランスを代表する世界的な出版社で、20世紀の出版史の核をなすだろう。ジッド、プルースト、アラゴン、ブルトン、マルロー、ジョイス、フォークナー、サン=テグジュペリ、サルトル、カミュ、デュラス、三島、ル・クレジオ、クンデラ……ガリマール出版社の出版カタログはそのまま20世紀文学史と言えるほど。

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(査読委員会による評価資料〔右〕。ジャン・ポーランがブランショ『謎の男トマ』を査読した結果報告。「サルトルの『嘔吐』を想起させる。それほど多くの読者は望めないだろうが、出版するべき」)

そもそも『新フランス評論(NRF)』誌の刊行から始まり、雑誌出版からガリマール出版が生まれ、20年代にフランスの主要な出版社となる。戦争期には文化占領の一環としてナチスに主導権を握られもした。戦後は、プレイヤード叢書、フォリオ文庫、子供向け書籍、人文科学叢書など画期的なシリーズを刊行し続けてきた。今回の展示では、ガリマールお馴染みの装丁の朱色の壁が設えられ、著名な作者の草稿やガリマール社宛の書簡が並び、ヴィデオ映像が投射されている。

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(カルチエラタンを歩いていると道路が封鎖されて、延焼したバスの周りに消防車と警察が多数。「もしかして、テロ?」と咥え煙草の青年に聞く。「まさか! たまたまタイヤから出火したらしいよ。」)

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フランスでは、古くからある教会でコンサートが頻繁に開催される。主にクラッシックが演じられ、厳粛な空間に音が響き渡る様子は圧倒的だ。「パリの宝石」とも呼称される壮美なステンドグラスに囲まれたサント=シャペル教会で、ヴィヴァルディの「四季」を聴いた。弦楽団によるかなり自由な解釈の演奏で、ロックのライブをも思わせる激しいパフォーマンスは刺激的だった。明日、三月の最終日曜日にフランスはサマータイムに移行し、日没が劇的に遅くなる。

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[ 2011/03/27 21:19 ] 報告・取材記 | TB(0) | コメント(-)