東北大震災の後、福島原発の事故が心配されるなか、悩んだ挙句、3月19日深夜、予定通りフランス出張に旅立った。今回の目的は、パリ・国際哲学コレージュでの二回のセミナー開催、ボルドー第三大学の視察、研究者との研究交流などである。国際ゼミ合宿の名目で、希望する学生4名が同行し、セミナーに参加することになっている。

パリのモンパルナス駅から南に下り、ボルドーまではTGVで3時間ほど。ガロンヌ河が流れ、大西洋にも近いボルドーはローマ時代から中継貿易都市として栄えてきた。温暖な気候と湿気を含んだ土壌はワイン栽培に最適で、ボルドー・ワインの優美な味は世界中を魅了し続けている。ガロンヌ河が三日月状の形をしているため、ボルドー市は「月の都」と呼称される。

ローマ時代の名残を残す石畳の道は現在、目貫通りになっていて、主要なブッティクやレストラン、カフェが並ぶ。中心市街地は適度な大きさで、1時間あれば無理なく散策できるほど。路面電車がのんびりと街中を駆け抜けるが、そのゆったりした姿もまたボルドー市の景観の一部だ。パリと比べてフランスの地方は物価が安く、実に美味しい食事を楽しむことができる。

(定番料理「鴨のコンフィConfit de canard」。塩漬けにした鴨肉をたっぷりの油で時間をかけてじっくりと低温で揚げ、最後に強火で皮をパリッと焼いた料理。)
友人のエディー・デュフモン准教授の案内でボルドー第三大学を視察し、図書館、食堂、日本語学科事務室、付属語学学校などを見学した。郊外にあるキャンパスは路面電車の5-6駅に及ぶ広大さで、パリの大学とは異なり、緑の多いゆったりとした敷地が特徴的だった。
日本語学科の浅利誠先生、地崇明先生とアルゼンチン・レストランで夕食をとり、ボルドー第三大学の実情やフランスの大学制度について話をうかがった。日本語学科は英語、スペイン語に次いで人気があり、新入生が220名ほど登録するという。漫画やゲームなど、若者のオタク文化の影響だ。ただ、フランスの大学は評価が厳しいので、一年次を終了できるのは4割ほどで、卒業できるのは40名ほどだけだ。

ボルドーで身体一杯に浴びた心地よい太陽の光を後にして、TGVに乗って再びパリへ。車中で翌日の発表資料の準備。国際哲学コレージュでの初のセミナー開催へ。
スポンサーサイト