【取材記@パリ】キャンパス計画――フランスの大学改革 公式HP映画「哲学への権利――国際哲学コレージュの軌跡」

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【取材記@パリ】キャンパス計画――フランスの大学改革

9月の国際哲学コレージュ取材に引き続き、2008年11月末、国際フォーラム「哲学への権利」を開催するために再びパリに滞在している。パリは例年以上に寒い日が続いており、今日は早くも粉雪が舞った。

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現在、フランスでは急速に大学改革が進められている。2007年春、大統領に就任したサルコジはまず高等教育改革に着手し、早くも8月には「大学の責任法」を成立させる。フランスの大学は大部分が国立大学だが、この法律は日本の国立大学の独立行政法人化にも似た仕方で、各大学の企画運営に自律性をもたせると同時に自己責任を負わせる。この改革は大学における産学連携を可能にする一方で、大学の自立や自治を脅かし、学問の独立性に根本的な変化を強いるものであり、学生や教員の激しい反発を招いた。だが結果的に翌1月から早くも20の大学が自律化を遂行し、すべての大学は今後3年以内に改革にしたがうことになっている。

世界ランキングにおいて遅れをとるフランスの大学の水準を引き上げようと、ここ数年来、研究教育活動の効率化を図るために、「研究と高等教育の拠点」(Pres: Pôles de recherche et d’enseignement supérieur)や「先端研究の主題別ネットワーク」(RTRA: Réseaux thématiques de recherche avancée)といった施策が実施されてきた。大学の自律化を経た今年、高等教育研究省は「キャンパス計画(Plan Campus)」を打ち上げ、全国に10の「卓越したキャンパス(un campus d’excellence)」を新たに創設するとした。国営の電力・ガス会社EDFの一部を民営化して得られた資金をもとに、「キャンパス計画」には39億ユーロ(約5000億円)が投入されることになる。従来の大学施設の選択と集中を促進する抜本的で大規模な大学改革である。

この大胆な計画には批判の声もあがる。この新自由主義的な施策は大学間の階層化を促進し、とくに大都市と地方の研究教育格差を助長するものだからだ。また、政府主導の大学改革は往々にして大学の体制順応主義的な体質を助長し、その批判的精神を減退させることで、学問の重要な生命力であるその独立性を委縮させるからだ。しかし、大学ランキングにフランスの大学の存在感がないという焦燥感を打ち消し、研究教育の国際競争力を高めるという論理を説得することは難しかった。

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     (ソルボンヌ大学前広場)

大学人と財界人8名からなる審査委員会では、各応募キャンパスについて、研究教育の目的と展望、キャンパスの新設と移転の必要性、キャンパス・ライフの充実などが検討される。春の第一次募集では46の応募のうち、ボルドー、トゥールーズ、リヨン、モンペリエ、ストラスブール、グルノーブルが選出された。夏の第二次募集では20の応募のうちからパリ北部の「コンドルセ計画」(人文科学系)、パリ近郊ヴェルサイユの「サクレー計画」(理科学系)、マルセイユが選出され、さらに、パリ市内で最後の一拠点が決定され、「21世紀のカルチエ・ラタン」が創出される見込みだ。予想通り、大都市の伝統的な大学だけが拠点資格を獲得したわけである。

例えば、「コンドルセ計画」はヨーロッパにおける人文社会科学系の研究教育拠点形成を目指すものだ。パリ第1、8、13大学が連合し、社会科学高等研究院(EHESS)や高等研究院(EPHE)、人間科学館(MSH)と連携しつつ、2012年にパリ北部郊外のオベルヴィリエに新キャンパスが開設される。4億3,000万ユーロ(約560億円)を投じて新設される広大なキャンパスでは、約2,000人の教員と研究者、約15,000人の学生(6,500名が大学院生)が、整備された最新の施設や巨大な図書館で研究教育に従事することになっている。

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(フェルナン・ブローデルらが1963年に創設した人間科学館(MSH)もまた、新キャンパスに移転される。上はその完成予想図。パリ市内から研究教育機関の伝統的な建物がまたひとつ消え、その郊外化が始まる。)

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(グローバル資本主義の知的拠点として創設されるコンドルセ・キャンパスだが、その広場〔上図〕の名称は「人民戦線」、大学前に新設される地下鉄の駅名は「プルードン」)

日本でも2001年度から文部科学省のCOEプログラム(Center of Excellence卓越した拠点)が開始され、国際競争力に耐えうる研究教育の選択と集中が図られてきた。私たちのUTCPもまた、このプログラムの枠で大学内に設立された期限付きの組織である。

「卓越性(excellence)」の論理によって、高等研究教育は劇的な変容を迫られている。こうした潮流のなかで、資本の論理とはむしろ疎遠な人文学、とりわけ哲学にはいかなる意義が残されているのだろうか。今後、人文学、とりわけ哲学はいかなる制度として実現されるべきなのだろうか。人文学の責任を、哲学への権利をいかなる研究教育制度において構想するべきだろうか。

UTCPブログより転載
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2008/11/post-149/
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[ 2009/08/30 16:32 ] 報告・取材記 | TB(0) | コメント(-)

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