2010年6月26日、石川県西田幾多郎記念哲学館にて映画上映とレクチャーがおこなわれた(60名ほどの参加)。

(自然の傾斜地形を利用した建物)
西田幾多郎の生誕地に設立された記念館は、2002年に安藤忠雄氏の設計で新規移転し、田園地帯の真ん中でひときわ目立った近代的なたたずまいである。わざわざ「哲学館」という名称が付けられており、たんなる西田の記念館ではなく、哲学に触れる機会を幅広く提供することが目指されている。

(瞑想のための円形の吹き抜け空間)
西田哲学に魅了された安藤氏の建築では、彼独自のコンクリート様式に温かみのある木材が調和している。館内は案内指示が極力排され、鑑賞者自身が道順を迷い考えながら散策する仕組みになっているという。哲学入門と西田の生涯に関する展示があり、哲学書の図書室も併設している。

年間12回の哲学セミナーが開催されているが、その一環で映画上映がおこなわれた。哲学館はけっして交通の便の良い場所にあるとは言えないが、それでも石川県中から聴衆が一定数集まって来るようである。

観衆からのアンケートでは、「日本人が西洋哲学に触れることについて、今後の議論に期待したい。日本の哲学者の位置を問い直してもらいたい」「日本に哲学のニーズはほとんどないのではないか。学問として、哲学の発展可能性はあるのか」「映像の切り方、つなぎ方は一考の必要あり」「『哲学とは何か』『大学と在野で哲学することの違いとは』と考え続けてきたが、それにある形が与えられたように思う」といったコメントが寄せられた。
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