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【報告】カルチュラル・スタディーズ学会@嶺南大学(本橋哲也、デンニッツァ・ガブラコヴァ、リチャード・レイタン)

2010年6月21日、カルチュラル・スタディーズ学会の世界大会Crossroads(@嶺南大学)にて映画上映がおこなわれた。約25名程度が観賞したが、カルチュラル・スタディーズ(以下CSと略記)に辛辣な場面では会場から軽やかな笑いもおこった。

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映画上映と連動したパネル・セッション「カルチュラル・スタディーズおよび新自由主義的人文学教育におけるその理論状況――制度、我有化、翻訳」では、本橋哲也(東京経済大学)、デンニッツァ・ガブラコヴァ(香港城市大学)、リチャード・レイタン(Franklin & Marshall College)とともに討議がおこなわれた。

映画と関連する論点としては、「ある学問分野が制度化されるとはどういうことか」が議論された。本橋の分析によれば、日本では1980年代の批判理論の受容に引き続き、90年代にCSが本格的に定着する。CS研究は一定の支持を得て、CS専攻の教員が大学にポストを獲得するようになる。CSに関する出版物は続々と刊行されてきたが、しかし、日本ではCSを専門とする学科は存在せず、CSの学会も定期刊行物もいまだ存在しない。それゆえ、CSは大学の既存の学科(社会学、メディア研究、地域研究、比較文学など)の周縁的な位置においてその影響力を行使してきたと言える。

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(デンニッツァ・ガブラコヴァ、本橋哲也、リチャード・レイタン)

かくして、日本では、CSは緩やかなネットワーク的運動としてアカデミズムと在野のはざまで展開されてきた(その成功例は2003年から日本各地で開催されている学術的イベント「カルチュラル・タイフーン」だ)。それは、過度に専門分野化されることなく横断的実践知として効果を発揮すると同時に、大学内に固有の特権的場所をもたない脆弱さという点で曖昧な立場である。日本のCSは制度化と運動のあいだで展開される学問分野の特異な事例であり、この事例は国際哲学コレージュの在り方とも通底するものだろう。

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CSの観点から大学制度をみると、現在、香港やシンガポールではCS関連の学部学科が新設されているという。政府が高等教育への予算を増額して、留学生を引きこむことのできる魅力的な新設学部が次々に生まれているのだ。香港やシンガポールの大学では英語使用が一般的なので、世界中から留学生を呼びやすいという利点もある。いずれにせよ、人材育成や知識資本への社会的投資という点で、大学への期待は高まっていると言えよう。日本では高等教育への公的支援が貧弱だが、研究教育費を出し惜しんでいる場合ではないことを痛感させられた。

香港での2回の充実した上映・討論会を経て、東アジア初の映画上映が終了した。わずか3日の滞在だったが、現地の教授たちからは中国各地の上映の準備には協力するとの言葉をいただいた。今回の香港上映は数年後に開始される中国での巡回上映の始まりにすぎないのだろう。私の意志とは違う力学で、新たな出会いの力に導かれて、映画はさらに旅を続けていく。
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[ 2010/06/20 22:32 ] 上映報告(海外) | TB(0) | コメント(-)

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